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GLOBE計画の実践

掲載の目的
 本HPに「MYメモリー」のコーナーを設けて、2年ほど経ったあるとき、西中時代の学校教育の中に環境学習に取り組んでいたことを思いだし資料を取り出してみました。その中で、GLOBEの実践結果資料を今一度見たとき、教育諸課題が多い時代背景において、この機会にこれをMYメモリーとして刻むだけでなく、この足跡をもとにして、卒業生のみならず多くの人々に何かの示唆を与えるものではないかと思い、掲載しました。



環境問題に主体的に取り組む生徒の育成を目指して

〜インターネットを利用したGLOBE計画の実践〜


1 はじめに
 宮田町立宮田西中学校では、平成9年度からGLOBE計画(グローブ:環境学習のための地球観測プログラム)の指定を文部省から受けて2年を終えようとしている。 準備期間もあり生徒たちがかかわった実践は1年と2か月ほどではあるが、筑豊博物研究会から発表依頼を受ける機会に、これまでの内容をまとめた。
2 グローブは環境教育の一環
 (1) グローブとは
 グローブとは、世界の子どもたち、教育者、科学者が協力して、地球環境について、調査研究し理解を深めるための国際的な環境教育と科学の共同プログラムである。このプログラムは、1994年に、下表のような目的でアメリカ合衆国のゴア副大統領によって提唱された。英語の正式名称はGlobal Learning Observations Benefit of the Environment(環境学習ための地球観測プログラム)とばれている。その頭文字をとってGLOBEという。
GLOBEの事務局(アメリカ))の目的

○全世界の人々の環境に対する意識を高めること。
○地球に関する深い科学的な理解を増やすこと。
○生徒の理数能力の水準の引き上げに関すること。
 日本では1996年度から中学校21校がモデル校として指定されて開始された。その中に福岡県では北九州市立千代中学校が含まれていたが2カ年で1期は終了した。 1997年度(平成9年度)からは、世界50か国、日本では中学校19校のモデル校が選出され、本校がその中に加わった。
 各モデル校の生徒は、教師の指導のもとGLOBEの定めた観測手順にいたがって、左下の表のように、気温、降水量、降雪量、雲の観測、水温と水のpH、生物測定、ランドカバー、種の同定などの環境測定を行うこととしている。
  〜主なGLOBEの観測・測定項目〜
○大気調査(雲の種類、気温、降水のPH測定等)
○水質調査(水温、アルカリ度等)
○土壌調査
○土地被覆(衛星画像を分析)
○生物測定(樹木)
 

 これらモデル校から、観測データを上図のように、GLOBEアメリカのデータ処理センターへ報告すると、全世界から送られてきた観測データとともに、GLOBEの科学者によって分析、処理され、最新の地球観測イメージ画像がつくられる。そしてモデル校はその画像を利用することによって、身のまわりの環境問題から、世界規模への環境問題へと学習を発展さ せることができる。
 (2)本校のGLOBEのねらい
 本校の研究のねらいは、下表のように、気象等の観測・測定の態度の習得、そのことによって自然等の環境問題への関心の高まり、さらにインターネット活用することによって、インターネットの素晴らしさを感得させるなどの情報リテラシーの高まりをねらった。
3 GLOBEの実践と結果
 (1) 具体的な活動
 本校の実践は、大きく以下のように分けることができよう。指定校の多くの中学校が、一部の生徒対象で実施されているようだが
      本校の実践項目
@ 学校内周辺での環境観測(毎日)
A 「GLOBE JAPAN」「GLOBE USA」への観測データの送信(毎日)
B 世界中のGLOBE参加校が送ってきたデータからつくられたデータの利用
C 環境に関する学習
、本校は、全生徒を対象に進めていった。
 この中で@とAは、確実に全生徒を4名〜5名ほどで構成した班を25班に分け、各班1週間ごとの交替で毎日昼休みに当番の生徒が写真のように百葉箱、及びその周辺で観測データを収集している。水のpH検査も左の写真のように行っている。
雨水の酸性雨の検査をしている
  その後、毎日のように生徒自らの手でインターネット送信を行っていった(下写真)。  これらは、現在では教師の手を取ることもなく自主的に行われて毎日交替で観測データ等をインターネットで送信しているいる。 ただし、土曜日、日曜日、休日等の学校の休業日には自動観測の仕様になっているので、そのデータを出校日の折に何日か分をまとめて観測・測定しインターネットによって送信している。

 (2) 実践上の苦心したこと
@ 生徒の観測機器の操作やインターネットなどの操作に慣れさせることにかなりの時間がかかった。
A 本校の教師側のGLOBE担当者は、土壌や植物に関する専門の知識に乏しく、その面の取り組みをほとんど行っていない。 そこで、現在もその研究を続けている。
B 体育祭等の学校行事中には、生徒が忙しく、観測の時間がとりにくいことがあった。
C この実践は、昼休みという生徒にとって大事な時間帯である。その時間を使わざるを得ないというリスクが生じていた。
 このような苦心を重ねてきているが、観測を始めた当初はインターネットへの接続において、コンピュータそのものに不安定な状態が多く、なかなかデータを発信できないなどのトラブルに見舞われたりしていたが、現在は安定している。 また、当初生徒たちは、計器類の操作や雲の種類の同定等の観測にも手間取っていた。 しかし、現在では、先に経験している2、3年生の援助を受けながら1年生も観測を進めているほど、生徒たちの自主的・自発的な活動がみられるまでになってきた。
 (3) 1年後の生徒の反応
 下表のような簡単なアンケートを、本格的に実践して1年2か月経った12月18日に全学年生徒対象に実施した。 そのアンケートに基づきながら、本研究の分析・考察を進めることにした。 アンケートの方法は、「どちらともいえない」といった中の段階を省いた4段階で行い、その分析の視点は、yesかnoかの二分法で行ってみた。
調査用紙の内容
 B GLOBEの気象観測やインターネットによるデータ発信などは、これまで何回しましたか。
                  (            )回
 C 雲量・気温・雨量・pH値などのGLOBEの観測は、
      1 したことがある    2 したことがない
       ↓
◇D 上のCで「1 したことがある」と答えた人は、そのとき、
      1 楽しかった  2 少し楽しかった 
      3 あまり楽しくなかった   4 楽しくなかった 
  E GLOBEで測定したデータをインターネットで発信は、
     1 したことがある    2 したことがない
           ↓
◇F 上のEで「1 したことがある」と答え、そのとき、
      1 楽しかった  2 少し楽しかった 
      3 あまり楽しくなかった 4 楽しくなかった 
 G この次のGLOBEでの観測やインターネット発信は、
      1 まちどおしい   2 ややまちどおしい
      3 あまりしたくない   4 したくない
 H このようなGLOBEでの観測やインターネット発信をすることによって、地球の自然保守などの環境問題に関心が
      1 高まったように思う   2 少し高まったようだ
      3 かわらないようだ
 I この観測やインターネット発信を経験して、感じることや思うことを、2行ほどで、下の□欄に書いてください。

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<環境問題への関心度>
 ア グラフから
 左下のグラフから、本校の生徒たちは、GLOBEを体験することによって、地球環境問題などへの関心度は、大きく高まったといえそうである。GLOBEで地球環境問題への関心は高まったか
 とくに、昨年から通年2年にわたる二年生・三年生の多くは、高まったと意思表示をしている。
 イ 感想文から
 ここで、各学年の主な自由記述による感想を聞いてみよう。 これは115名の生徒から無作為に取り出した感想(2行程度で求めていた。)の一部である。

自由記述による感想文の抜粋
(2行程度と指示) 
一年生 ○雲にびっくりした。様々な種類があって、名前がついていて、西中の空にもいろいろな雲があってびっくりした。
○GLOBEをしてみると酸性雨がちょっとあったりしているので心配です(女子)。
○校内の代表として観測しているので、間違いなく発信して役割を果たせて良かったと思います(女子)。
○私たちの学校の周りにはたくさんの緑に囲まれていますが、それでも酸性雨が降っていることを知った(女子)。
○環境問題で今問題になっているので、少し役に立てたと思う。(男子)
○この観測をして酸性雨が降っていることを知ってとてもよい経験をしました。インターネットは大変おもしろいです。
○私ももうちょっと環境問題に目を向けないといけないといけないと思いました。
二年生 ○観測はやっていて楽しかったです。気づかないような普段は見るのも忘れてしまう天気もみれて良かったです(女子)。
○普通の学校では経験できないことだからとてもいいことだと思う(男子)。
○インターネット発信を経験して思ったことは、GLOBEをする前は、環境のことを考えなかったけど、自分では少し高まったと思う
(女子)。
○日本でもこのように調べることが少ないのにここ西中にきたということがとても幸運に思う(男子)。
○世界で観測したことをおパソコンによってつなぐことがすごいと思う(男子)。
○雨が何性かを調べるときのpH値が酸性に近く地球が危なくなりよるなと思った(男子)。
○子どもにこの観測をさせ、地球がどうなっているかを教えたい(女子)。
三年生 ○今、オゾンホールや酸性雨の問題が深刻になってきているのでもっと環境問題について考えたいと思います(男子)。
○こういうことすることで、世界の環境などが一気にわかるのでいいことだと思うし、日本の環境のことに関心がわいた(男子)。
○地球の温暖化が進んでると思った(男子)。
○私はとくに雲量を調べるのがすごく楽しみでした。空を見て、雲の種類がたくさんあることを知ったし、いろんな種類があって雲の名前と形を思えることができたしすごくきれいな雲を見つけることもできました!(女子)。
○今環境問題について非常にいろいろと言われているけど、インターネットで世界とつながっていて情報などを送るのもとても素晴らしい事だと思います(男子)。
○ここからインターネットでデータを送るだけだと楽しみはないけど、GLOBEのホームページによって環境問題に興味がわきます(女子)。
  一年生は、雲の形が多いのにびっくりしたなどの新鮮な感動の気持ちを表しているものが多く見受けられたが、二年生になると、このような経験を踏まえて、さらに「これからの子どもに教え導きたい」など、外回りに意識が向く傾向を見ることができたようである。 三年生になると、観測データの発信のが環境問題を解決する一助になればという願いがみられ、観測という行いを社会という環境に大きくかかわろうとする能動的な姿が見られるようになっているようである。
 そのように見たとき。この1年間余でそれぞれの生徒たちが徐々に膨らみ始めている様相を感じることができるようである。
  このことを、地球環境問題への関心が高まりを各学年でクロスしてみたのが下図のグラフである。学年と環境問題関心度との相関は
 そのグラフでは、関心度が高まるほど2・3年生が増えていることを示している。これは、観測・発信のGLOBEの取組の期間が長いほど、生徒の関心・理解を深めていると解釈できる。 実際に、2、3年生で「はじめは観測の目的や方法がよく理解できなかったけれども、やっていくうちに徐々にわかるようになってきた」と感じている生徒も数多く見受けることができた。
  ウ 観測経験と環境問題への関心度
  そこで、観測を経験した生徒と観測する機会を逸した生徒とが地球環境問題への関心度のクロス処理を行ったのが下図である。観測・測定をした経験頻度と環境問題との相関度は
 その結果、経験しなかった度数は僅かであったが観測経験をした生徒ほど、その環境問題への関心度は高まったと自覚している生徒が多いといえそうである。
 このことから、少ない生徒でも5回、多い生徒で20回の観測及びインターネットデータ発信の経験をさせることができたGLOBEの取組は、生徒たちに何らかのインパクトを伴って、観測の方法と自然事象を見抜いていく力を高めたといえよう。
4 実践のまとめ
 (1) 環境問題に意識を高めるGLOBEの目的に沿ったように、先の生徒の感想の中に「近頃環境破壊が進んでいるので、もっと多くの人が環境のこととかを考えるようになってほしい」(3年女子)といった切実な訴えをしているのに、いくつか出会うことができた。
 私たち学校の教師として、生徒の基礎的な学力、それに基づいて応用・発展的な学力などを求めてきた。しかし、このような生徒の心からほとばしるものを、過去の学校は問題にあまりしていなかった。むしろペーパー上の問題を解いていく学力のみを求めることに学校のねらいがあったような気がする。 しかし、このGLOBEはその生徒たちが、心の内面から自己の考えを持ちそれを純粋な気持ちで我々に訴え問いかけている。
 これは、まさに本主題である「環境問題に主体的に迫る生徒の育成」になっているのではないかと考える。このような生徒のたちの思い・願いは、これからの生きていく力、学力の本質の側面を表しているのではなかろうか。
 本校は、このことを誇りをもって生徒に示したいし、保護者にも知らしめたいと思っている。
 (2) ボランティアマインドを高めるGLOBE
 平成10年12月19日、本校一斉に学校周辺地域のボランティア学校外ボランティア活動空き缶拾い活動を行った(右写真)。
 環境をきれいにさせることは、自然を守り「人間と自然との共存を考える」(本校の環境教育のテーマ)に迫る活動になることを期待している。 そのような活動において、生徒たちが能動的に活動できているのもGLOBEの実践の成果からともいえよう。
 今後、生徒の豊かな思いを大事にしつつ、21世紀を担っていく生徒の育成に尽くしたい。
※この実践報告は2年間終了後のものであるが、その後、3年間にわたり実践を継続した。